江戸小紋「万筋」と手描き「しけ染め」江戸小紋「万筋」と手描き「しけ染め」

2018年6月16日

江戸小紋「万筋」と手描き「しけ染め」

梅雨寒と申しますか、とても寒い土曜日となりました。皆さまのお住まいのところではいかがでしょう?

こんなに寒くては透ける夏の装いをご紹介しても何だかなぁ~(>_<)ということで、本日は夏のご準備をちょこっとお休みして、お客様にとても褒められる二つのタテ縞のお着物のお話でもしてみようかと思います。

江戸小紋「万筋」と手描きの「しけ染め」

*スマホの方はビヨーンと大きくして頂けると万筋の細やかなタテ縞をご覧頂けると思います。

どちらも清々しい縦ラインの美しいお着物ですが、見た目も風合いも随分と異なります。と申しますのは・・・

江戸小紋は伊勢型紙を用いて染める型染めの仕事です。「万筋」はその型紙を彫るのも大変高度な技術を要する江戸小紋の逸品でございます。型で染める江戸小紋は、その型紙を寸分たがわず染め上げるという熟練の職人さんにしか成しえない大変にち密な仕事であり、究極の完成系を目指して染め上げて行く作品です。熟練の職人さんならばできるというものではなく、この仕事は職人センスがなければ染め上げることのできない至高の逸品江戸小紋ともいわれています。

一方、しけ染めは、しけ刷毛を用いてフリーハンドで染め上げていきます。刷毛の太さを変えて、微妙な色使いを変えて、何度もシケ縞を引いて、その都度蒸してを繰り返します。あらかじめ完成系があるわけでなく、どんな色のどんな太さのシケ縞を足すのか、やめるのか、それはもう職人さんの芸術的なセンスによるものです。そのため、タテ縞のゆらぎも、お色のニュアンスも、一点ずつ異なる作品が仕上がります。

どちらも華やかな作品ではありませんが、それゆえに着る人に寄り添うことでその美しさを開花させてくれるお着物です。

江戸小紋「万筋」

手描き「タテしけ染め」

タテ縞のお着物は「粋」な着物として大変に人気のある文様で、古くは江戸時代の浮世絵にも、粋な女性の着姿が多く描かれてきました。

「粋」という美意識はたぶん日本独自の感性によるものではないかと思います。「粋」ってどんな人?どんな感じ?一言で表すのはとても難しいように思いますが・・・

例えば(あくまで個人的なイメージですが)、甘いより辛い、おしゃべりじゃなくて無口で、群れることなく常に一人で立ち、流されず、曲げず、でも、とても情に厚くて人の痛みに敏感で、色のイメージはカラフルでなく無彩色系、だけど内面からは素敵な色気を感じてしまう、とても強くてたくましくもありますが、しなやかで儚げな健気さも感じさせてくれる、そんな美しさなのかと思います。

情景でいえば、切れることのない糸のような細い細い雨、霧雨よりももう少し存在感のある雨だけど、土砂降りではなくて、絵にすると鉛筆で幾つも線を重ねたような、そんな五月雨のような雨、そして冷たい雨にゆれる柳の枝のような、そんなイメージです。

たぶん、そんな情景が美しいと心に響く皆さまは、きっと、「粋」な方ではないでしょうか?

なかなかにふわっとした日本の文化的な美意識の一つではありますが、きっとどなたの心の中にも深く刻まれた粋のDNAが根付いていることと思います。それをちょっぴり具現化したのが、このタテ縞のお着物なのかもしれませんね。

 

本日は、単衣向けのコーディネートにこちらの帯を合わせてみました。

夏袋帯「よろけ」(泰生織物)

西陣の老舗「泰生織物」謹製の夏と単衣の季節の袋帯です。とても珍しい織り上がり。西陣でも多く機やさんが廃業される中、老舗中の老舗である泰生織物さんでは、現代のシーンにも似合う新しい織物の制作にも挑戦をされています。こちらの作品も旧来の袋帯とはひと味違う、伝統的な織の技術を生かした現代的な作品です。個人的にもとても好きな作品です。

こちらのシケ染めの素材はシャリ感のある単衣向けの素材です。触って頂くとその心地よさをご体感頂けると思いますが、素材も作品のうちですね。

いつもコーディネートをする際には、机上に並べて撮影をしています。色数の少ない粋な装いはあまりフォトジェニックではない分SNSなどでは「いいね!」が増えないことが悲しいのですが、何度も申しますが、お召し頂いてはじめて、その美しさが開花する装いであるのです。

例えば、五月雨に濡れる柳の下には美しい女性に佇んでいて頂きたい。そんな気分でございます(^^;

※帯の商品ページ⇒こちら

時に、こんな装いは自分に自信のある美しい人でないと着こなせないのでは?なんてお声を頂戴することもあるのですが、決してそんなことはないのです。だって「粋」というのは、完成された情熱系の美しさではなくて、少し引き気味の控えめな美しさのような気がしますから(*^^*)

 

さて、五月雨とは旧暦五月の長雨のこと、つまり梅雨の雨のこと。

つくづくと軒のしずくをながめつつ
日をのみ暮らす五月雨の頃
(西行)

 

来週は雨が降ったりやんだり、梅雨本番のお天気になりそうです。寒暖差もあり体調がすぐれないなんて方も多いかもしれませんが、週末はゆっくりとお風呂で温まって美味しいものを食べて、ごろりんのんびりとお過ごし下さいますように!

日曜日・月曜日は定休日を頂戴いたします。お休み明けにまた元気にお目にかかれますのを楽しみにお待ちしております。

 

 

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