2022年4月1日
本日も引き続き、東京友禅作家「田邊慶子」先生の新作帯のご紹介です。
3月に行われた「染芸展」では、伝統的工芸品産業振興協会長賞を受賞された作品です。
何とも珍しい、ここにしかない、こちらの帯をご案内いたします。お祭りの山車?どこの?
友禅染め名古屋帯「川越祭り」
蔵づくりの街並みが今なお残る川越の街は「小江戸川越」と親しまれており、散策にお出かけされた方も多いことと思います。その川越で、毎年秋の10月に行われている「川越祭り」の山車を描いた作品です。川越祭り、ご覧になられたことはありますか?
ユネスコ無形文化遺産・国指定重要無形民俗文化財にも指定されている川越祭りは370年の歴史を誇り、その期間には二十数台もの豪華絢爛な山車が賑やかなお囃子とともに、蔵の街はじめ町中を曳行されます。何台もの山車が辻で出会いすれ違う様は誠に圧巻で、多くの観光客を魅了してきました。
この帯に描かれている山車は、その中の一つ「三番叟(さんばんそう)」の山車です。
田邊先生のお話では、この山車を描くことには大変に苦労をされたとのことで、何しろ川越祭りの山車は、大変精巧につくられて鉾は細部まで煌びやかに豪華に装飾されており、さらには二層からなる鉾は機能的な動きをします。何度も手直しをして下絵を作り上げられたそうです。
実は、このデザインを描くきっかけとなったのは、お客様からの訪問着のご注文がきっかけだったとのことです。(こちらがその訪問着の山車です)この度の帯には描かれていませんが、山車の足(車)の部分まで、綿密に描かれています。
そして、仕上がった訪問着はこちら。10月のお祭りの時期の、晴れやかな華やぎを感じさせてくれる、艶やかな訪問着です。
訪問着の右袖後ろ、名古屋帯の前柄に描かれたお面は、三番叟(さんばんそう)の人形が首からぶら下げているものです。三番叟は、能の演目にある翁の舞で、その三番叟が付ける黒色尉(こくしきじょう)の面です。三番叟は「五穀豊穣」を祈る舞で、豊かな実りをもたらしてくれます。
山車の鉾に描かれた御祭禮(ごさいれい)の文字と両脇の紐飾り、人形の衣装や鉾の金装飾の一部は刺繍です。
近づいてみれば見るほどに、鉾の細やかな質感がつたわってくるようです。
今回の名古屋帯では、波柄地紋の帯地を用いて、波間に浮かぶような幻想的な仕上がりになっています。
山車モチーフでありながら、まるで宝船のようなよそおい。古より、人々の願いの中核をなす「豊かさへの祈り」は、全国各地のお祭りにも、また伝統的な意匠にも込められているのですね。
川越にご縁のある方はもちろん、そうでなくても宝船に見立てたこの美しい伝統遺産をぜひご覧になってみませんか?
店内にて展示販売中です。お値段などはどうぞお問合せ下さいませ。
※友禅作家さんに、帯や着物のオーダーを受けまわります。大事なモチーフ、思い出の場所、なつかしいアイテム、心に残る景色など、探しても見つからない情景を描くことができます。ご自分だけ、この世に一つしかないお宝づくりを承ります。どうぞ、ご遠慮なくお気軽にお問合せ下さいませ。
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