万筋万筋

2021年10月6日

万筋

伊勢型紙の技術の中でも希少となってしまった、「縞彫り」の型紙で染める「万筋」という江戸小紋のお話をさせて頂こうと思います。

江戸小紋万筋

江戸小紋「万筋」。「粋」という美意識を究極の形であらわした日本が誇る伝統的工芸品です。どうぞ少しばかりお付き合い下さいましたら嬉しいです。

まずは「型紙」のお話。。

「万筋」の型紙は短時間で一気に、定規をあてて均等の縞柄を彫りあげます。単純な作業のようですが、一本の縞を彫るのに同じ箇所を3度続けて小刀でなぞるので、極めて正確な技術が必要とされます。しかし、縞を彫っただけでは、何本ものストライプの線がヒラヒラと浮き上がった状態のままです。このままでは染め師さんがヘラをあてることができず型付けができません。

この型紙のすごいところは、ヒラヒラを抑えるために「糸入れ」という技術が施されているところです。

「糸入れ」とは、あらかじめ型地紙を2枚にはがし重ねて縞を彫ってからもう一度2枚にはがし、その間に絹糸を張ってずれないように柿渋で張り合わせるという作業です。伊勢型紙の産地には、昭和30年に6名の重要無形文化財保持者(人間国宝)が指定されましたが、その中には「糸入れ」の城ノ口みえさん(2003年死去)も入っていました。
「糸入れ」は彫りの技術と同様に、大変に貴重な技術です。現在では、この糸入れの技術が最も稀少なものとなっています。

こちらが「万筋」の型紙です。横に絹糸が貼ってあるのがわかるでしょうか?

そして「染め」のお話。

この型紙で染め上げる「万筋」は何とも言えない味わい深い江戸小紋として、多くの江戸小紋ファンに愛されてきました。

まず、単純なストライプだからこそ、微妙に異なる線の太さ。それがコンピュータのストライプとは異なる“しなやかさ”を生み出します。縞柄は「粋」な柄として江戸時代には大変もてはやされました。ストンと縦に落ちる縞は、小雨がや柳に通ずるようなしなやかさがあり、その粋な風情がたまらなく好まれたのです。

そして、染め上げたときに、先ほどの「糸入れ」の後がほんわかと残ります。「糸入れ」をした細い絹糸が張ってあるところには、糸の下の生地までしっかりと防染糊がおりません。そのため地染めをした時に絹糸が張ってあったところも一緒に地色に染まってしまう部分が出てきます。なので、よ~く見ると、横に細~く、ところどころ、ヒュンヒュンと横線が見えます。写真でお伝えするのがなかなか難しいのですが、わかるでしょうか?

画像ではとっても難しく申し訳ないです。ご来店下さった際にはよぉ~くご説明させて頂きます(^_-)-☆

そしてまた、万筋の型紙のサイズは、ヨコは反物巾ありますが、タテは約15-6㎝しか彫られていません。これ以上の長さのものを彫ることは、上記のような型紙の工程を考えても非常に難しいもので、古来より型紙の中では最も短いサイズのものです。その型紙を反物一反約12.5m分型付けを繰り返すと、約80回の送りが必要になります。

しかし、縞模様というのは、一反の端から端まで、ラインがちゃんとまっすぐずっと繋がっていなければなりません。そのため、わずかなブレを手直しする「地直し」という工程が重要になります。染めの技術は型付けばかりでなく、この「地直し」もとても重要な技術なのです。

このように、微細な文様の江戸小紋は、精緻な型紙と染めの技術の両方が相まって初めて生まれる芸術品でございます。

※江戸小紋の染めの工程⇒こちら

  万筋(二つ割)文様江戸小紋

「二つ割」とは3㎝幅に23本の縞が染めてあるものです。

「万筋」の味わい深さは、手業であればこそ生まれる“しなやかさ”と“粋”の風情です。遠目には縞柄を認識することが出来ないほどの微細な縞文様なのに、それが不思議なことに、同じように無地に見えてしまっても、「極鮫」とはまるで雰囲気が異なることに驚きます。

一目で何の柄かわかりようもないほどの微細な柄を彫って染める、だったら無地でいいじゃん!なんて思われるかもしれませんが、いえいえ違うのですよ!

それが、江戸小紋がいかに「粋」なお着物なのか、ということでございます。

“粋”と言えば・・・

万筋の縞は近くに寄り添って並んで走っているのに、ずっとずっと、どこまでも交わることがありません。でもずぅーーと最初から最後まですぐそばで離れ離れになることもありません。

例えば人も、どんなに大事に思っていても、誰でも、自分の道は自分の足で歩かねばなりません。すぐそばで心からのエールを送ることはできても合体して背負って歩くことはできませんね。それぞれが踏ん張りながら自分をちゃんと生きているからこそずっと一緒に居られるのかもしれないです。だからこそ清々しく、そして美しく、いつまでたっても飽きることなく大事に思えるのかもしれません。粋とはそういうこと。そんなことがどこかの古書にかかれていたような。。。

どうぞぜひ、その美しい佇まいを間近でご覧になって見ませんか?

※万筋江戸小紋もお好みの柄でおあつらえ染めを承ります。しかしながら、そのような工程を行うため通常の江戸小紋よりもお時間を長めに(染めに3カ月ほど)頂戴いたします。型も染も希少となってきておりますので、そろそろどうぞ、“いつかは万筋” ご相談、お問合せお待ちしております。

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当店の江戸小紋は(一部の反物を除き)お色と柄をご指定頂いてからお染する「おあつらえ江戸小紋」です。

そのため、店内見本にご用意のない色×柄の組み合わせは、反物に染めてしまう前に「お試し染め」(詳細⇒こちらクリックでご案内)というサービスをご用意しています。

※染めに1か月~2カ月、お仕立ては1に月半ほど頂戴しております。

『江戸小紋のおあつらえ』いろいろ、何なりと、お気軽にお申しつけ下さいませ。

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